2026年07月15日
日常のすぐ隣にある「もうひとつの世界」―川上弘美の魅力

私は、文章が上手で好みの文体であれば、大きな事件が起きない静かなストーリーでも十分に楽しめます。むしろ、そういう落ち着いた話の方が好きなくらいです。
ただ、単に人の気持ちだけを追いかける恋愛小説や、謎解きだけのミステリーには、あまり心が惹かれません。
どこか現実離れした雰囲気、ゾッとするような恐怖や驚きやファンタジー要素が、どこかに散りばめられていてほしいのです。
ただし明らかな異世界では、ストライクゾーンが狭まり、その世界観にハマれないと楽しめません。
その点で、川上弘美さんの小説はまさに私の好みにぴったりです。彼女の書く世界は、一見するとどこにでもある普通の日常です。
まずはスッと入れる。しかし、少し読み進めていくうちに(たいていは数行または数ページ以内に)、「非日常」に触れて、いつの間にか戻って来れている。
大事件や怪物の登場はなくても、「視点のずれ」によって何かが起こっている。解決したような、腑に落ちないような。
明瞭な夢をみたはずなのに、よく覚えていないような、そのバランスが本当に絶妙なのです。
「もしかしたら、自分の身の回りにもこんな非日常が潜んでいるのではないか」と、本気で思わせてくれます。
キッチンの引き出しの中、犬の瞳の奥や、散歩道の曲がり角に、いつもと少し違う世界が静かに息を潜めているかもしれない―――。
まだ数冊の体験ですが、あまりに気に入ってしまって、Amazonセールで10冊ほど大人買いしました。
短編が多いので、スキマ時間にちょっと行って帰って来れるのも魅力。さあ今日はどこへ迷い込もうかなとKindle Paperwhiteを開くのが、最近のいちばんの楽しみです。












































