2019年12月10日
WATE

Tri-Elmar-M F4.0/16-18-21mm
海外では”WATE”(Wide Angle Tri-Elmar)と呼ばれる。
建築や風景写真の作例が多く見られるが国内のレビューはほとんど無い。海外にはライカを「道具」として実用する人が多いのかもしれない。
中古の流通も少なく、ずっと出物を探していた。自分などが新品で買えるレンズではなく、限定セールで通常の3割引という格安中古をようやく見つけた。
それでもあれこれ手放した上に小遣いローンを組まねばならない代物だ(T_T)...
これまでライカでの建築写真にはコシナフォクトレンダーSWH12mmII、15mmIII、コシナツアイスビオゴン21mmなどを使用してきた。
SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 III は歪曲収差が極小でシャープだが、像面湾曲のため絞っても遠景の周辺が甘く、パープルフリンジも目立つ。
ビオゴン21mmは周辺がかなり甘く、フリンジ、ビネットも大きい。ややクラシックな写りで街のスナップでは楽しいレンズだが仕事では不満があった。
コシナのレンズは価格を考えれば十分に高性能なのだが、全体的に企画第一主義というか、一芸に秀でながら小型化とコストダウンの影響で捨てている部分も見受けられる。
機構面ではヘリコイドの造りがもうひとつ。グリスに頼っているのか、最初は重めでザラっとして、使い込むとトルクが軽くアソビが大きくなっていく。
また慌ただしい竣工写真現場で15mmと21mmの交換は結構面倒で、結局15mmのトリミングで対応するようになった。
しかし外観撮影ではどうしても21mmあたりが欲しい。他社ミラーレスなら14-24mmなどのズームレンズがあるのだが、それはまあ...



発色はコシナよりウォームトーンでコントラストが高く、他のライカレンズとよく揃う。6bitコードの恩恵もありRAW現像が簡単だ。
周辺まで色収差・パープルフリンジは皆無。フリンジは手間を掛ければ補正できるのだが、多少でも残るとデジタル臭さが出てしまう。
F4開放では周辺が僅かに甘いが、F8まで絞れば隅々まで超シャープでキレッキレに写る。
コシナ15mmのような像面湾曲はなくフラットで、画面内の風景を均一にスキャンする感じだ。絞りによる被写界深度のコントロールもしやすい。
モアレ・偽色が出ることがあるが、これはライカがローパスフィルターレスであり、レンズの解像度が高いせいでもある。

もう13年前のレンズの割には逆光にもそこそこ強く、太陽を真ん中に入れてもなんとか耐えてくれる。

専用フィルターアダプターを介してフィルターも装着できる。ただし切り欠きから背後の光が入ってフレアが出ることがあるので要注意。
最短撮影距離は0.5mで、0.7mまでは距離計に連動する。0.7mを超えるところでヘリコイドが一旦止まり、重くなるところが面白い。
ヘリコイドの動きはさすがライカという感触で、重めかつ滑らかなトルクで、止めたいところでピタッと止まる。
焦点距離切替えやフォーカシングでレンズの全長は変わらない。3焦点をカバーする被写界深度スケールが面白い。

左から16mm、18mm、21mm
光学的な歪曲収差はあり、特に16mmでは小さくないのだが、レンズプロファイルによってどの焦点でも歪みは完璧に補正される。
6bitコードによってレンズ装着時に16mmのプロファイルとなるので、18,21mmで撮るときは手動設定またはLrで現像時のプロファイル選択が必要になる。
そして海外の掲示板等では明らかになっているが、トリ・エルマー16-18-21は実は3焦点レンズではなく、クリックストップ付きの16-21mmズームレンズなのである。
ライカから正式なアナウンスは無いが、中間位置でも画質の劣化などはなく、普通に撮影できる。
レンズプロファイルが理想的ではなくなること、また光学ファインダーのフレームが使えないが、ライブビューでは全く問題ない。
ちなみに同じトリ・エルマーでも28-35-50mmは3焦点レンズであり、中間は使えないらしい。
あちらはブライトフレームが連動するなど便利なところもあるが、明るい名玉揃いの焦点域で存在価値は微妙な気がする。

フルサイズセンサーに対応する16-21mmという変態的?ズームレンズが重量わずか330gで、前玉が小さく、ライカに装着してもバランスは損なわれない。
最近のミラーレスの広角ズームレンズも高性能ではあるが、いずれもはるかに大きく重い。
コンパクトなレンズに対して専用ファインダーは巨大で、海外では「フランケンファインダー」と揶揄されたりしている。
ライブビューで使うことが多いだろうし、手放して資金の足しにしようと思っていたのだが、造りがあまりにも良いのでしばらく使ってみようと思う。
1本のレンズのために造られたファインダーとしては、執念というか狂気すら感じるほどなのだ。
フランケンと呼ばれるだけあって無骨なデザインだが、これはこれでモダン・ライカらしい機能美という気もする。
採光式で5種類のブライトフレームを切替えられ、パララックス補正も可能。レンズと連動せず距離計を内蔵していないだけで、M型ライカ内蔵ファインダーの広角版といえる。
アルミダイキャストのしっかりした造りで、もう1台ライカを持っている気分になれるかもしれない(笑)
見え味はコントラストが高く、明るくクッキリして見やすい。アイポイントが長く、18mm、21mmのさらに外側が見えるのも案外使いやすい。
樽型の歪曲はあるが、実像型であり視野とブライトフレームの両方が同じように歪むので撮りやすい。簡易なアルバダ型外付けファインダーはフレームが真っ直ぐで視野が歪曲しているので、水平が出しにくいのである。
視野内に蓄光式の水準器を内蔵しているのも特徴で、横位置限定ではあるが十分実用になり、しっかり水平が取れる。
以前使っていたマミヤ7の43mmファインダーにも水準器が内蔵されていたのを思い出した。
光学ファインダーで撮る感覚はいかにもライカらしくて楽しい。背面液晶は許せるが、EVFは好きになれず手放してしまった。
M10はバッテリー容量が小さいので、省エネのメリットも大きい。

画面全体が非常にシャープなので、モノクロームも撮りたくなる。
21mmは昔から好きな焦点距離だ。町並みや風景を自然な雰囲気で撮るにはこの画角が限界かもしれない。
フィルム時代にはオリンパスOM21mm/f2やライカ・スーパーアンギュロン21mm、マミヤ7+43mmなどを好んで使っていた。



インテリア撮影では16mmも多用するが、外観は21mmからのトリミングが一番使いやすいと感じる。


16-18-21mmという画角はパノラマ写真にも最適。周辺まで均一で光量落ちが少ないので自然な描写となる。



LEICA M10-P + Tri-Elmar-M F4/16-18-21mm
以上、日本一詳しいトリ・エルマー ”WATE”のレビュー(笑)
仕事によし、旅や街歩きによし。僕にとってこれ以上の広角レンズは存在しない。頑張って夢をひとつずつ叶えていこう(笑)













































