読書と歴史民俗

2017年07月25日

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上原善広さんの大ファンだが、これは誰が読んでも面白いと思う。実際、かなり売れているらしい。昭和の大阪にこんな空間が存在していたのか。生々しい人と人のぶつかり合い、音や臭いや空気が強烈に伝わり、どんな映像よりも映像的、しかし絶対に映像化はされないテーマだ。上原善広さんは被差別部落の出身で、ほとんど1人でこのタブーを切り開いてきた。重いテーマを絶妙な距離感で淡々と描くのが魅力だが、この作品は最初から最後まで眼前で見ているような、息をつかせぬダイナミックな活劇である。至高の名作「日本の路地を旅する」とは筆致が対称的でありつつ共に自身のルーツを辿る双子のような作品。実父のことを書いたらこの先どうするのだろうと勝手に心配してしまう。これは大宅賞をもう一度取ってもいいと思う。最高!!


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2017年03月31日

道徳教科書でパン屋を和菓子屋に、アスレチック公園を和楽器店にという修正(忖度?)はあきれる他ないが、日本史の教科書にはずっと根本的な疑問がある。

豪族間の争乱の末、7~8世紀に覇権を取った勢力が自らの正当性を示すために編纂させたのが古事記と日本書紀。それ以前の文字資料は中国大陸側のわずかな記載を除けば極めて少なく、日本の古代史は何もわかっていない。7世紀以前は純粋に科学的な「考古学」の分野なので、歴史教科書においては「不確か」であることを明記し、ロマンあふれるコラム程度に取り扱えば良いと思う。その分の時間を近代史に多く使い、また民俗学や統計学の知見を借りて、権力者だけでなく一般民衆がつくってきた歴史にもっと光を当てるべきだろう。農業や産業、文化の発展と人口推移を骨格として、そこに諸外国との交流関係や時の政治体制を重ね合わせた、ダイナミクスを体感できるような歴史の授業を望む。

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2017年02月19日

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稚子塚古墳と立山連邦。 続きを読む

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2017年02月06日

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間取りの手帖   …伝説の名著をついに入手!
絶版のため古本が凄い値段になってるけど、オークションなどで探せば適正価格でなんとか見つかる。
なぜこんな間取りになったのか、構造や法規その他の原因をプロの視点で想像してしまう(笑

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2016年12月03日

東京藝大は敷地内に自由に入れてしまうので何度か行ったことがあり、独特の雰囲気に憧れを感じていた。最近話題の本書は取材中心の軽い内容でさらっと読める。世の中には実利を考えず好きなことだけを追求する純粋な人たちがいる。ところで建築は工学部の中ではかなり個性的で創造性が求められるが、ファインアーティストに比べたら明らかに「不純」だ。合理性や予算や周辺環境も考慮し、多数の関係者をコントロールし、施主の満足や利益を最大限にしようとする。プロジェクトによって自分を7割出せることもあれば1割のこともある。あえて1割に抑えることでうまくいくケースもある。やはり「不純」だ...7割出せる自分でいなければ1割の人からの依頼も来ないだろうし、好きなことを仕事にしてなんとか食べていけるのは幸せなのだが、純粋になりたいという真の芸術家への憧れはずっと持ち続けるのだろうと思う。

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2016年09月29日


ヒコーキ少年の父の影響か?小学生の頃から戦記物が大好きで、最近読んだこの2冊はとても面白かった。日本の戦闘機乗り名鑑として保存版になる貴重な資料。日系アメリカ人の著者による、英雄譚にならない客観的な記述が良い。戦争初期にもP-40やグラマンF4Fが零戦と互角に戦っていたこと、末期にあっても旧式の隼がP-51を撃墜していたこと、夜戦エースや水上機エースの存在など、ワクワクするものがある。特に陸軍のノモンハン事件のあたりは驚くようなエピソードもあって読み応えがある。自分は20代の頃にパラグライダーで房総の崖から海の上を、トイレを必死で我慢するくらい飛び回っていた時期がある。トンビを上から見下ろす特別な世界だった。ライト兄弟が飛んでから30年かそこらで航空戦力が勝敗を決することになり、飛行機に乗って戦うのは歩兵や海兵とは違う特別なものだったのだろうと感じる。明らかに無謀で馬鹿で罪深い戦争だったが、アジアの小国がこうしたハイテク兵器を設計、製造し、使いこなしていたこと自体は否定しなくてもよいと思う。

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2016年08月21日

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暑い日曜日。ダイアナ・クラールを聴きながら「コンビニ人間」を読んだ。こういう話題の本はあまり買わないが題材に社会学的な興味があった。
なかなか面白いし考えさせられるところもあるけれど、ラノベ的というか、芥川賞ってこういう作品でいいんだ〜と思った。

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2016年04月22日

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サンカ社会の研究 三角寛

古本が安くなってきたのでようやく入手。復刻版が出るまでは「幻の研究書」として古書店で10万円以上の値が付いていたそうだ。確かに、当時は「どうしても読みたい」と思わせる本だったのだろう。サンカといえば三角寛  、三角寛といえばサンカ。昭和初期にサンカ小説で一世を風靡した後に表舞台から消え、戦後しばらくして突如として発表された驚愕の研究書。三角寛はこの論文で文学博士号を取ったのだという(文学というところが微妙な扱いだ^^;)。

ただし今となっては、読み進めるのがやや辛い本である。古本が安くなったのは理由がある。そう、これは偽書なのだ。

内容のほとんどが創作だとわかっていても、よくもまあここまで書けたものだと、三角寛の想像力と忍耐力に驚いてしまう。最近の他の研究者による客観情報を知らなければ、信じてしまう人がいても無理はない。全編が(わかる人にはわかる^^;)民明書房みたいなものなのである。いまだにネットで「サンカ」と検索すれば三角寛ワールドが真実として流布されている。何を隠そう僕自身も、初めてサンカに興味を持った10年くらい前には三角寛を起点とする情報のいくつかを信じていたのだ。映画 瀬降り物語 や小説 風の王国(五木寛之) は三角寛の影響下の作品であり、これらの「二次創作」がサンカ像を作っていったことは間違いない。そしてこれらが虚構であることが確実視されるようになったのは、ここ10年以内のことであろう。

本編との対比として、巻末(といってもかなり物量がある)の沖浦和光 による解説が素晴らしい。沖浦氏のサンカ論に僕は全面的に賛成はしないのだが、三角寛作品の虚構性を冷静に指摘している。そして最後に、三角寛の著作権を引き継いた婿養子、三浦大四郎氏によるあとがきが秀逸。養父への複雑な感情が吐露されてなんとも言えず物哀しく味わい深い。この「研究書」は偽書ではあるが、近世の山河に漂泊民が存在したことはれっきとした事実であり、そのことが社会でどのように捻じ曲げられてきたかを知る上で、避けては通れない貴重な資料であると思う。


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2016年04月12日

サンカの村、マタギ、被差別部落などを訪ね歩くルポルタージュ。特にサンカ末裔の取材は貴重だ。サンカの主要な生業とされる箕作りへの差別がまだあることに驚く。徹底して足で稼ぐ一匹狼のような研究者、筒井功 さんの存在そのものが発見だった。ちょっと文体が軽くて印象に残りにくい気もするが、とても読みやすい。他の作品も題材の選択が興味深いのでぜひ読んでみたい。

それにしても宮本常一の忘れられた日本人 は多くの作家や研究者に深く愛され、尊敬されているのだなあと思う。



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2016年04月08日

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つがるそとさんぐんし.....縄文から中世にかけて、ここにもうひとつの日本があった.....長く辺境とされてきた東北の寒村に熱狂をもって迎えられた王朝伝説。日本史を根底から塗り替えるような「大発見」を追うひとりの新聞記者による渾身のルポルタージュ。事件の経緯と壮大さ、そして社会的影響はあの旧石器捏造事件にも似ている。どちらも東北の地から生まれたのは偶然ではないかもしれない。そして実際に「本物」である三内丸山遺跡が発見されたことが、こんな虚構にさえロマンを与えている気がする。400ページを超える長編だが、文のテンポと構成が良く臨場感抜群なので休日が1日あれば一気に読める。歴史考古学マニアでなくとも、ミステリーとして読んでも絶対面白い、超お薦めの1冊。


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