読書と歴史民俗
2022年04月12日


”ゲタバキの元気少女・竹本チエは、浪花の小学生。自由きままに生きている父親のテツは仕事もせずにバクチに明け暮れ、母親のヨシ江は別居中で、おジイはん、おバアはんや、テツの恩師・花井先生に心配をかけている。
「ウチは日本一不幸な少女や」が口グセのチエだが、店の仕入れ金を盗もうとするテツをゲタでドツキつつ、ネコの小鉄とともに、家業のホルモン焼き屋をきりもりしているのだ。”
じゃりン子チエにハマっている。
昔、TVアニメ版を観ていた時にはいまひとつピンとこなかった。独特な絵柄と淡々としたストーリーは、ドラえもんや少年ジャンプに慣れた子供には早すぎたのかもしれない。
また大阪下町の人間模様は、郊外の住宅地でサラリーマン家庭に育った自分にはファンタジーであり、共感しにくかった。
ホルモン屋を切り盛りする小学生のチエをはじめ、人物も設定も自分にとっては現実味がなく、ごちゃごちゃして、ガサツで、うるさく思えた。
ところが今読むとその全てが魅力的で、深くシンプルに染み入ってくる。高畑勲監督の劇場版アニメも名作だが原作のほうがさらにいい。
登場人物の心の機微が繊細に描かれ、かといってベタな人情ものではない。チエの性格が表すように、どこか乾いた哀しみ、心地よい距離感がある。
作画やテンポも素晴らしい。今はもう失われたヒューマンスケールな街の時間と空間が伝わってくる。昭和の風俗について民俗学的な価値もあると思う。
基本的に1話完結で丁寧に作られていて、一気に読むのはもったいない。1晩に1,2話がいい。仕事を終えてチエちゃんの店に寄るのが楽しみになる。
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2020年08月24日

東欧サッカークロニクル
クロアチア・ザグレブに始まり、マケドニア、ルーマニア、リトアニア、グルジア、ウクライナ、アイスランド、キプロスといったサッカー小国のレポートが綴られる。
サッカーそのものよりも、サッカーという共通言語を通して欧州大陸の広さ、深さ、複雑さを感じさせ、全ての国を訪れてみたくなる内容だ。
欧州CL(チャンピオンズリーグ)は予選から楽しくなるし、さらにマイナーなクラブが参加するEL(ヨーロッパリーグ)にも興味が湧く。
(今季はコロナの影響で短期トーナメントでの開催となり、どちらも面白かった!)
中でもモルドヴァ国内に存在する(全く知らなかった!)沿ドニエストルという未承認国家へのアウェイ珍道中編が最高に面白い。
ユーゴ内戦に影響したとも言われるボバンの飛び蹴り事件についても、ボバン本人へのインタビューを行った上で深く考察されている。
各国ごとの短編集になっているが、googlemap等でそれぞれのクラブや街を調べながら読んでいたので、時間がかかってしまった。
サッカーファンはもちろん、欧州の旅行や文化、歴史に興味のある人にもぜひお勧めしたい。
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2020年02月29日
家族で絵本にじいろのさかな の話題になって思い出したのが、ねじめ正一との伝説の名勝負。
双方死力を尽くした手に汗握る激闘。企画も構成も知性に溢れていて、テレビに力があった最後の時代かなと思う。
また読みたくなって、自選 谷川俊太郎詩集 を注文した^ ^
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2017年07月25日

上原善広さんの大ファンだが、これは誰が読んでも面白いと思う。実際、かなり売れているらしい。昭和の大阪にこんな空間が存在していたのか。生々しい人と人のぶつかり合い、音や臭いや空気が強烈に伝わり、どんな映像よりも映像的、しかし絶対に映像化はされないテーマだ。上原善広さんは被差別部落の出身で、ほとんど1人でこのタブーを切り開いてきた。重いテーマを絶妙な距離感で淡々と描くのが魅力だが、この作品は最初から最後まで眼前で見ているような、息をつかせぬダイナミックな活劇である。至高の名作「日本の路地を旅する」とは筆致が対称的でありつつ共に自身のルーツを辿る双子のような作品。実父のことを書いたらこの先どうするのだろうと勝手に心配してしまう。これは大宅賞をもう一度取ってもいいと思う。最高!!
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2017年03月31日
道徳教科書でパン屋を和菓子屋に、アスレチック公園を和楽器店にという修正(忖度?)はあきれる他ないが、日本史の教科書にはずっと根本的な疑問がある。
豪族間の争乱の末、7~8世紀に覇権を取った勢力が自らの正当性を示すために編纂させたのが古事記と日本書紀。それ以前の文字資料は中国大陸側のわずかな記載を除けば極めて少なく、日本の古代史は何もわかっていない。7世紀以前は純粋に科学的な「考古学」の分野なので、歴史教科書においては「不確か」であることを明記し、ロマンあふれるコラム程度に取り扱えば良いと思う。その分の時間を近代史に多く使い、また民俗学や統計学の知見を借りて、権力者だけでなく一般民衆がつくってきた歴史にもっと光を当てるべきだろう。農業や産業、文化の発展と人口推移を骨格として、そこに諸外国との交流関係や時の政治体制を重ね合わせた、ダイナミクスを体感できるような歴史の授業を望む。
豪族間の争乱の末、7~8世紀に覇権を取った勢力が自らの正当性を示すために編纂させたのが古事記と日本書紀。それ以前の文字資料は中国大陸側のわずかな記載を除けば極めて少なく、日本の古代史は何もわかっていない。7世紀以前は純粋に科学的な「考古学」の分野なので、歴史教科書においては「不確か」であることを明記し、ロマンあふれるコラム程度に取り扱えば良いと思う。その分の時間を近代史に多く使い、また民俗学や統計学の知見を借りて、権力者だけでなく一般民衆がつくってきた歴史にもっと光を当てるべきだろう。農業や産業、文化の発展と人口推移を骨格として、そこに諸外国との交流関係や時の政治体制を重ね合わせた、ダイナミクスを体感できるような歴史の授業を望む。
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2017年02月19日
2017年02月06日
2016年12月03日
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2016年09月29日
ヒコーキ少年の父の影響か?小学生の頃から戦記物が大好きで、最近読んだこの2冊はとても面白かった。日本の戦闘機乗り名鑑として保存版になる貴重な資料。日系アメリカ人の著者による、英雄譚にならない客観的な記述が良い。戦争初期にもP-40やグラマンF4Fが零戦と互角に戦っていたこと、末期にあっても旧式の隼がP-51を撃墜していたこと、夜戦エースや水上機エースの存在など、ワクワクするものがある。特に陸軍のノモンハン事件のあたりは驚くようなエピソードもあって読み応えがある。自分は20代の頃にパラグライダーで房総の崖から海の上を、トイレを必死で我慢するくらい飛び回っていた時期がある。トンビを上から見下ろす特別な世界だった。ライト兄弟が飛んでから30年かそこらで航空戦力が勝敗を決することになり、飛行機に乗って戦うのは歩兵や海兵とは違う特別なものだったのだろうと感じる。明らかに無謀で馬鹿で罪深い戦争だったが、アジアの小国がこうしたハイテク兵器を設計、製造し、使いこなしていたこと自体は否定しなくてもよいと思う。
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