2017年07月25日
路地の子
上原善広さんの大ファンだが、これは誰が読んでも面白いと思う。実際、かなり売れているらしい。昭和の大阪にこんな空間が存在していたのか。生々しい人と人のぶつかり合い、音や臭いや空気が強烈に伝わり、どんな映像よりも映像的、しかし絶対に映像化はされないテーマだ。上原善広さんは被差別部落の出身で、ほとんど1人でこのタブーを切り開いてきた。重いテーマを絶妙な距離感で淡々と描くのが魅力だが、この作品は最初から最後まで眼前で見ているような、息をつかせぬダイナミックな活劇である。至高の名作「日本の路地を旅する」とは筆致が対称的でありつつ共に自身のルーツを辿る双子のような作品。実父のことを書いたらこの先どうするのだろうと勝手に心配してしまう。これは大宅賞をもう一度取ってもいいと思う。最高!!