東京藝大は敷地内に自由に入れてしまうので何度か行ったことがあり、独特の雰囲気に憧れを感じていた。最近話題の本書は取材中心の軽い内容でさらっと読める。世の中には実利を考えず好きなことだけを追求する純粋な人たちがいる。ところで建築は工学部の中ではかなり個性的で創造性が求められるが、ファインアーティストに比べたら明らかに「不純」だ。合理性や予算や周辺環境も考慮し、多数の関係者をコントロールし、施主の満足や利益を最大限にしようとする。プロジェクトによって自分を7割出せることもあれば1割のこともある。あえて1割に抑えることでうまくいくケースもある。やはり「不純」だ...7割出せる自分でいなければ1割の人からの依頼も来ないだろうし、好きなことを仕事にしてなんとか食べていけるのは幸せなのだが、純粋になりたいという真の芸術家への憧れはずっと持ち続けるのだろうと思う。