2016年03月02日
芸能人はなぜ干されるのか
実はかなり売れているらしいが、タイトルほど下世話な本ではない。有名なゴシップの真相みたいな話ももちろんあるが、中盤からはそうしたことが起こる構造について、芸能の歴史をじっくり紐解いてゆく。ヤクザが仕切っていた戦前戦後、1950年代の映画全盛期に作られた5社協定というカルテル、時代の変化を先取りしていったナベプロ、バーニング、ジャニーズ、吉本らの栄枯盛衰が淡々と描かれる。全てが真実とは限らないが情報量はたいへん多く、取材はさぞ大変だったろうと思う。
僕はサッカー以外にほとんどTVを観ないし芸能界には疎く興味もないので、民俗史のひとつとして興味深く読んだ。日本のあらゆる産業の根底にある元締め構造が最もわかりやすい形で表れるのが芸能界だ。そして中世以来、賤民の仕事とされてきた芸能への蔑視が今も残っていることを強く感じる。SMAPの会見はまさにそれだった。あれほどの人気がありながら、彼らは人間としての尊厳が完全に無視されているように映った。