2014年12月24日
漁業という日本の問題

漁業という日本の問題
この本を日本人すべてに読んでもらいたいと思う。世界に類を見ない「焼き畑漁業」を今も続ける日本。ほぼ無規制で獲ったもん勝ち、世界の海を荒らしまくった末に日本の海も砂漠化させつつあるのに産官学一体となって問題を先送りしている。日本漁業を衰退させたのは消費者の魚離れでも燃料高でもなく、無秩序な乱獲による資源の枯渇。つまり日本人はもう魚を獲り尽くしたのだ。これまで疑問に思っていたことが全て氷解する名著。著者の勝川俊雄氏は若干42歳で漁業を愛し日本を変えつつある研究者。論旨は正確でニュートラルでわかりやすく面白く、ひと晩で一気に読めます。ぜひぜひ!

例えば東シナ海はこんな感じ。日本人が獲って獲って獲りまくり、中国・韓国船が来た時にはもう枯渇しきっていた。今はもう、底引き網を入れても何も穫れない砂漠のような海なのだという。ちなみに日本人の「魚食文化」は沿岸漁民を除けばほとんど戦後に始まったもので、さほど歴史はない。それがこの50年で日本の海を食い尽くしてしまった。
少し前にイカ釣り船の燃油問題がニュースを賑わした。あれはエンジンの燃料ではなく過剰な集魚灯のための燃油である。実際にはもっと暗くしても十分にイカは獲れるのだそうだ。なぜ過剰に明るくするのか。無規制の早い者勝ちシステムゆえに隣の船より早く多く獲るために必要なのだ。漁獲量を個別規制すれば解決する問題なのに、誰もやろうとしない。
世界の漁業国はすべて科学的に資源管理をしているが(韓国でさえ!)、日本はほぼノールール・ゲームである。自分が獲らなきゃ他人が獲る。目先の金になるものを奪い合って獲るしかないのだ。政治も学会もメディアも見て見ぬふりをして問題を先送りしてきた。結果的に生産者は自分の首を絞め、消費者も損をする。ここで思うのだが、このようなことは漁業に限らずあらゆる業界で起こっているのではないか。自分が属する建築界も例外ではない。日本の社会構造や日本人のメンタリティが関わっているように思えてならない。
※基本的にイデオロギー的なものは好きではないし拡散したくもないのですが、勝川氏は違います。科学的、実証的アプローチで日本の漁業に警鐘を鳴らし幅広く活動されています。
勝川俊雄公式サイト twitter;勝川俊雄 facebook;海の幸を未来に残す会