2025年01月29日
直列型ネットワークの考察

引用:John Broskie's Guide to Tube Circuit Analysis & Design
スピーカーのクロスオーバーで、直列型ネットワークという回路がある。
上図の左が直列で、右は一般的な並列ネットワーク。並列型6dB/octネットワークの、ツイーターの(-)とウーハーの(+)をつなぐだけでも直列型が成立する。
回路図を眺めて考えてもよくわからない。非常にシンプルなようで、カオス・ブランコのような不思議さ、奇妙さを感じる。
最初は、ツイーターが壊れるのではないかと思ってしまったし、クロスオーバー付近では妙な動作を起こしそうにも見える。
実際の製品で使用されているケースも少ないながら存在するようだ。たとえばALTEC604D~E型がそうらしい。
直列型はクロスオーバーのつながりが良いとも言われているが、これを技術的に解説するウェブサイトは少なく、国内では皆無といっていい。
メリットやデメリットについては、Elliot Sound Products の解説が比較的わかりやすい。以下google翻訳で抜粋。
ウーファーのインピーダンスが変化すると、ローパスセクションとハイパス セクションの両方に影響し、フィルター セクションの Q が変化します。結果は明らかです。並列クロスオーバーとは異なり、ウーファー (またはツイーター) のインピーダンスがシフトしても、応答はフラットのままです。両方がいずれかの方向に変化した場合、同じことが起こります。理論的には、これは直列ネットワークがドライバーのインピーダンス変動の影響をほとんど受けないことを意味します。
ドライバー インピーダンスを変更すると、2 つのことが起こります。フィルターの Q が変化し、反映された変化が他のフィルター セクションの動作に影響します。個々の応答、Q、位相は変化しますが、最終的な結果は、有効なクロスオーバー周波数が変更されるだけで、それ以上の変化はありません。これは注目すべき特性であり、直列 1 次クロスオーバー フィルター回路は、この機能を備えた唯一のクロスオーバー フィルター回路です。
並列ネットワークでは、アンプの出力インピーダンスとケーブルのインピーダンスのみによって、ハイパス セクションとローパス セクション間のクロス カップリングが可能になります。ゼロ オーム ソースの場合、減衰は無限であり、上には示されていません。直列ネットワークはクロスオーバー フィルターの分離のみに依存しているため、結果として、ウーファーからの逆起電力は、直列ネットワークでは、それ以外は同一の並列ネットワークほど減衰されません。逆起電力の減衰は、任意の周波数でのアンプの電力減衰と同程度 (実際には 3dB 優れています) であり、後者の振幅ははるかに大きいため、これは大きな問題ではない可能性があります。それでも、これは考慮すべき事項であるため、ツイーターの相互変調が増加する可能性があることに注意してください。ウーファーの逆起電力は、あまり考慮されませんが、全体的なパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
メリットは、ユニット相互のインピーダンス変動の影響を受けにくいことにあるようだ。一般的な並列型では、それぞれのユニットのインピーダンス変動を完璧に補正しない限り、凹凸ができやすい。
直列型では、インピーダンス変動によってクロスオーバー周波数はずれるが、応答と位相は自己修正されるという。
デメリットは、ユニットが起こす逆起電力の影響を受けやすいこと。互いに直列にスピーカーが接続されているのだからこれは理解できる。アンプから見て、ダンピングファクターが一定以上には上がらない。
もうひとつは、12dB/oct以上の高次フィルターでは、設計が非常に難しくなるようだ。
さらに、コイルの接続不良があったときに、並列型であればウーハーの音が出ないだけだが、直列型ではツイーターに低域が流れ込んで破損させるリスクがある。
直列型ではバイ・アンプ方式が使えないことも問題だが、いずれぜひ試してみたい回路だ。
コメント一覧
2. Posted by Roberto 2025年01月31日 20:53
Izumiさん
そうなるでしょうね。ただ一般的な並列ネットワークも、ユニットのインピーダンスが暴れるために平坦なクロスは結構至難なので、一長一短なのかもしれません。
そうなるでしょうね。ただ一般的な並列ネットワークも、ユニットのインピーダンスが暴れるために平坦なクロスは結構至難なので、一長一短なのかもしれません。
1. Posted by izumi 2025年01月31日 00:31
興味深い話なので回路シミュレーターを使ってみました。
例えばクロスオーオーバー部分を厚めにしようとしてインダクタンス値を少し小さくすると、左の回路は少しピークが出てしまいます。(カットオフ周波数付近で一旦盛り上がってから落ちる)
ピッタリはまれば良いのですが、LCって抵抗よりバラツキが大きな部品ですし、使いこなすのが難しそうですね。
例えばクロスオーオーバー部分を厚めにしようとしてインダクタンス値を少し小さくすると、左の回路は少しピークが出てしまいます。(カットオフ周波数付近で一旦盛り上がってから落ちる)
ピッタリはまれば良いのですが、LCって抵抗よりバラツキが大きな部品ですし、使いこなすのが難しそうですね。