2024年09月05日
ギフテッド 鈴木涼美
妻が借りてきていた本の中で、鈴木涼美の『ギフテッド』が目に止まった。
夜遅くにふと読み始めたら、あっという間に最後のページまで進んでいた。
物語は母娘の絆や確執を中心に進むが、主人公を通して描かれる群像劇でもあり、またノンフィクション・ドキュメンタリーのようでもある。
(新宿界隈と思われる)街の映像、音、匂いが五感に直接訴えかけてくるようなリアリティ。むしろ街そのものが主人公で、登場人物たちはその街を構成する体液のようなものかもしれない。
特に、主人公が住む裏通りにある雑居ビルの鉄扉と鍵の音の描写をとても気に入った。
明快なストーリー展開や感情移入を楽しみたい人には物足りないかもしれない。新宿という街の空気を多少とも知っていることも必要かもしれない。
自分はもう一度この本を開いて街にどっぷり浸かってみたいし、新たな発見もありそうに思う。好みの音楽を聴くように、何度でも読めそうな作品だ。