2023年08月17日
FE83solにもパッシブラジエーターを実装
元々は10リットルの大型密閉箱で製作し、その後ロングポートを付けてバスレフ化。
FE83solはFs=135Hzとかなり高いのだが、驚くほどの低音が出る。
ダクトチューニングは45Hzで、実測でも50Hzに強いピーク、60~100Hzにディップ。低めのFdと中抜けが、ダブルバスレフのような深くて柔らかい低音感に繋がっていると思われる。
サインウェーブを流していくと、800Hz、2kHzあたりでポー、ピーといったパイプ共振ノイズが聴こえる。これらは測定グラフ上では隠れてしまうが、音質には影響するだろう。
なお、この特性はプリメインアンプで低域をややブーストしている。FE83はどうやっても、そのままでは100Hz以下が不足するので、ブースト前提でエンクロージャーを設計している。
セットしたのはDaytonAudio DS135-PR
メインシステムと同じシリーズの13.5cmバージョンだ。
ドライバーとの面積比2.5倍は適切と思われる。
低域はバスレフよりも減ってしまった...しかし相対的にディップも抑えられ、EQしやすい素直な特性ではある。
サインウェーブを聴くと40Hzからレスポンスはある。 当然ながらポートノイズは消えた。
メインシステムのRME ADI-2PROとD級アンプCP500Xで聴くと、なかなか鮮烈な音だ。
FE83solの切れ味は素晴らしく、低域を少しブーストすれば音域バランスもいい。ボーカルや小編成の曲ならこれで十分と思わせる。
片チャンネルにラジエーターをセットした状態でバスレフと聴き比べてみた。
低音の量感はバスレフ>ラジエータ>密閉の順だが、より大きな違いは中音域にある。バスレフは声が鼻にかかる感じなどの雑味があり、パッシブラジエーターはスッキリした音になる。
これはJBLのメインシステムでも感じたことだが、ポートノイズが目立ちやすいフルレンジユニットのほうが差は大きいかもしれない。
ただ低音が減ってしまったのは意外で、この特性だとウェイトを増やしても変わらない気がする。
バスレフ同様に50Hzあたりで共振動作しているように見えるが、バスレフよりもピーク音圧がかなり低いのはなぜか。
新品でエッジが硬いのかもしれないが、他に思い当たることがあるとすれば、ドライバーとのMms(振動系質量)の比だ。
DS135PR / FE83sol = 21.8g / 1.53g =14.24
JBLシステムではDS315PR / 2206H = 200g / 65g =3.0 であり、ウェイト117g増で4.8、177g増でも5.8である。
ラジエーターの面積はドライバーの2倍以上が推奨されているが、面積が増えれば共振周波数は高くなる。小型エンクロージャーで十分低い共振周波数を得るにはMmsが重くなる。
ドライバーからみて14倍もの振動系を動かすのはしんどかったりする?Mms比に最適値はあるのだろうか?空気を動かすのはドライバーコーンの運動エネルギーなので、無関係ではないだろう。
21.8gの空気質量をバスレフポートに換算すれば、ラジエーターの口径×2メートル以上に達する。感覚的に、8cmフルレンジユニットで動かすのはちょっとつらい気もする。
ただしそれが大きな問題になるわけではなく、ラジエーターが動きにくければ密閉箱に近づくだけだろう。
リビングの5極管プッシュプルアンプでは全く違う音になる。低音がまったりして、中高域も甘く柔らかく、刺激的な音が一切出ない。特にクラシックと相性抜群。
バスレフより歪み感が減ってより聴きやすくなったが、低音の量感も減ったのでブースト量は少し増えた。
コストパフォーマンス的に大成功とは言い難いが、2作目のパッシブラジエーター化で知見が増えたと思う。
①バスレフより中音域の歪や雑味がなく、全体的にクリアでHi-Fi感が増す
②密閉型の低域肩特性を少し持ち上げた感じの、タイトな音質傾向
③ウェイトを増やせば密閉型の音に近づいていく
④共振周波数はラジエーターユニットの定数とエンクロージャー容積のみで決まるが、選定にあたりドライバーとの相性も無視できない
うまくチューニングすればバスレフと密閉のいいとこ取りができる可能性を感じるし、自作スピーカーにありがちな中音域の雑味を減らせるメリットは大きいと思う。また作ってみたい!