ROBERTOHOUSE

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    2021年09月24日

    パッシブラジエーターに挑戦!

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    新たなチャレンジ。


    ウーハーJBL 2206Hは歯切れの良さと中域の質が抜群だが、95dBという高能率ゆえ低域がロールオフする。
    エンクロージャーはJBL431X系と同じ45リットルとしており、これは部屋とのバランスからぎりぎり最大のサイズだ。
    バスレフポートのfdを上げれば量感は増すが質は低下する。現状はポートを延長して35Hz程度に低く抑え、EQでブーストしている。
    EQと相性がいいのは密閉型だが、タイトになりすぎてちょっと寂しい。

    どのようにしても最低域がちょっと抜ける感じで、2206Hの能力を活かせているとは言い難い。もう少し力感、塊感が欲しいし、重心を下げたい。

    そこでしばらく前から勉強しているのがパッシブラジエーターである。 以下長文になります(^^;


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    パッシブラジエーターといえば古くはJBLオリンパス、L75メヌエットが有名で、近年ではTHIELのCSシリーズだろう。
    PC用やスマートスピーカー、ヘッドフォンなどにも多用されており、Creative T12を使っているが価格とサイズからは信じられない音がする。
    スタジオモニターではFOCAL、MACKIEやreProducer、現行ハイエンドではamphionやPIEGAがある。

    しかし特に日本では、あまり本格的なHi-Fiスピーカーとはみなされず、本質を誤解されていたように思う。
    別称ドロンコーンとも呼ばれるが、みずから動かない「ドローン=怠け者」コーンのイメージからか、ドロ〜ンとした鈍い低音が出るという評価もあった。
    あの長岡鉄男氏でさえ製作記事を見た記憶がない。ラジエーターユニットの市販も僅かで、理論について正しく書かれたものは少ない。



    パッシブラジエーターの簡易な動作実験をしたことはあるが、本格的な設計・製作は未経験だ。
    原理的にはバスレフと同じ、ヘルムホルツ共鳴器の発音装置と言われている。きちんと計算しなければ失敗するだろう。


    Thiel & Partnerの解説などの文献とユニットのパラメータから、簡単なシミュレーションをしてみた。


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    結論から言えば、上図の ①小口径バスレフ ②超大口径バスレフ ③超大口径バスレフと同径同質量のパッシブラジエータ は同じように動作する。

    ②③で同じ共振周波数が算出されることに驚くが、パッシブラジエーターとは、事実上不可能な超巨大ポートの空気を、重い振動板に置き換えたものなのだ。

    一般的なバスレフ①はこのポートを1/10以下に小型化し、振幅をウーハーの10 倍以上に大きくすることで多くの空気を動かし、低域を稼いでいるのである。
    バスレフポートが「空気」だから出来ることで、パッシブラジエーターを小口径にしたらこんな振幅は取れない。
    ただし開口面積の小さなポートは振幅を増やしても空振りが多く放射効率が低くなる。1kHz前後の敏感な帯域にパイプ共振をもたらし、単なる「穴」であることから盛大な中高音の音漏れも発生させる。 

    パッシブラジエーターはこれらの欠点が少なく、共振周波数においては、あたかもダブルウーハーのように動作する。



    Jim Thiel氏の話(Dynamicaudioのコラムより)を引用すると、

    「先ず最初に、私はエンジニアであって政治家ではありませんので、日本の方々が考 えられていることを正すのには不利な状況にあることを最初にお断りしておきます。」

    「先ず、低域周波数帯域において、どちらもリフレックス型に属するパッシブラジエーターとバスレフポートは数学的にみても全く同じ性能を示すことは周知の通りである 。両者の働きに違いがあるなどとは世界中の誰もが理解出来ないことです。(現にティールが輸出している多数の国々からは、何の議論も持ち上がっていない)私が察するところでは、日本のオーディオ界で影響力のある人が間違ったことを提言され、それが日本での定説となってしまったのではないかと思われます。」

    「ある方はパッシブラジエーターは遅いと思われていますが、ポート方式では空気の質量がそこに存在するにもかかわらず、 それが目に見えないのに対して、パッシブラジエーターの場合そこに実際の物理的な質量(mass)が見えてしまうためにそう思われるのではないでしょうか。事実パッシブラジエーターの質量は、それと同一サイズのポートが持つ空気の質量と全く同じなのです。もっともパッシブラジエーターと同じ周波数にポートチューニングを施すと、数メートルにも及ぶ極端に長いポートサイズになってしまいすが。いずれにせよ質量は反応を遅らせることはありません。実際には質量を小さくすると結果的にブーミーな音になり、質量を大きくするとベースは過度にタイトでドライな音になります。両タイプの スピーカーにおいてはポート(又はパッシブラジエーター)の質量、ドライバーユニットのダンピング、キャビネットのサイズ、そして様々なパラメーターを入念に、そして 正確に設計することによってのみ正しい結果が得られます。」

    「それでは、レフレックス型が同じ 特性を示すのにティールはなぜパッシブラジエーターを採用しているのでしょうか。それはパッシブラジエーターが、次の二つの点でポートのもつ問題点を解決しているからです。
    (1)ポート管が独自(オルガンパイプと同様)な共振を持っており、測定上でも聴覚上でも500Hzから1,000Hzの中音域に「色付け」として現われるから です。それは、それほど大きな問題ではないのかもしれませんが、私達はそれを 取り去ることに価値があると考えました。
    (2)ポートはポート内部の乱気流と、キャビネット内部よりポートを通って逃げる風 のノイズによる影響を受けてしまいます。ポートを使用することはティールにと っても安易で低コストですが、それより割高になってもポートによる問題を解決 し、よりよい結果が得られるのであれば私達は価値のあることと考えました。 私の以上の説明で、日本の皆様がパッシブラジエーターに対しての考えを、少しでも 変えられることを期待します。」



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    大口径パッシブラジエーターユニットは選択肢がなく、唯一見つけたのがDayton Audio SD315-PR 31.5cm である。
    ペーパーコーンをコーティングしてあり、Xmaxは±10mmある。磁気回路が無いので驚くほど軽く、フレームは華奢だが磁気回路の反力を受けないので問題ないだろう。値段は8,228円と安い。

    このユニットのパラメータからThiel & Partnerの計算式により45リットル箱でシミュレートしてみると、F0=35Hzとなった。(裸のFs=16.8Hz)
    現状のバスレフチューニングと一致したのは偶然だが、このラジエーターは十分使えそうである。
    2206HのF0は52Hzで、エンクロージャーの内圧によって約70Hzに上昇している。1オクターブ下のチューニングは悪くない。
    もしも低域がボンつくようなら、ウェイトを増やしていけばf0が下がり、コントロールできるはず。

    ちなみに同じ箱にラジエーターを2個マウントして計算するとF0=47Hzに上昇してしまう。これはバスレフポートを増やすのと同じである。
    パッシブラジエーターは箱の容積が無関係だからいくらでも小型化できると書いている人もいるが、ヘルムホルツ共振である以上そんなことはない。
    ラジエーターの共振周波数を決めるパラメータは、ラジエーターユニットのVas、Mms、コンプライアンス、そしてエンクロージャー容積だ。
    バスレフと異なりMmsをいくらでも重くできるからエンクロージャーを小型化できるというのが正しい。
    バスレフだってポートを巨大化すればエンクロージャーを超小型化できる。ポートが大きすぎて結果的に小型にならないが(笑)

    ちなみにラジエーターをダブルにしてウェイトを各150g追加すれば同じく35Hzとなるが、電柱1本分の空気と等価となると、ちょっとやりすぎだろう...


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    THIEL氏の言うように、ラジエーターの質量を大きくすればタイトでドライな音になるのも頷ける。
    共振周波数が下がり、動かしにくくなり、密閉型に近づいていくのであり、振動系を重くする=音も重くなるわけではない。
    ドロ~ンとした音という失敗は、逆にラジエーターの共振周波数が高すぎてピークが耳についたり、ウーハーとアンプの制動力不足が主な原因ではないだろうか。
    仮に普通の30cmウーハー(Mms=50~80g)をパッシブラジエーターとして計算すると、共振周波数はかなり高くなる。短すぎるバスレフポートのようになってしまうのだ。




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    パッシブラジエーターの理論は理解できたが、音はどうだろうか?
    予想としては、やや密閉寄りのタイトな音で、かつ密閉よりは低音の量感が出せて、中高域の漏れが少ないために全体的にクリアになるのではないか。


    ではパッシブラジエーターに欠点は無いのか?

    心配なのはやはり、直径28cm長さ3mに及ぶ空気と等価な振動系をドライブすることができるのか? ということだ。ドロ〜ンとした重い音という一部の評価はここに原因があるかもしれない。
    巨大マグネットでオーバーダンピング型のウーハー2206Hと、ダンピングファクター400のD級アンプのドライブ力に期待。 

    ラジエーターのマウントはエンクロージャー背面とする。後壁との関係で量感を稼げるかもしれないし、逆にセッティングがシビアになるかもしれない。

    失敗したら塞げばいい!やってみよう!



    →パッシブラジエーター大成功\(^o^)/





    「オーディオ2020~」カテゴリの最新記事

      robertohouse │コメント(4) 
      オーディオ2020~ 

      コメント一覧

      4. Posted by Roberto   2022年03月09日 22:51
      PMC、Thielなど有名ですが、日本での評価はあまり聞かないですね。国産でも昔はありました。

      パッシブラジエータシステムはMMSを増やすだけで小型化できますが、バスレフの上位互換としてサイズに関わらず有効なはずで、むしろコストのかけられる高級機にもっと採用されていいのではと思います。
      3. Posted by 野良の三毛猫   2022年03月09日 07:36
      5 パッシブラジエーターは
      技術者好み
      海外製品に素晴らしいのが
      沢山あります。
      小型スピーカーの救世主
      2. Posted by Roberto   2022年03月07日 14:22
      長岡さんのドロンコーンスピーカーですか、型番は何でしょう?

      ドロンコーン(パッシブラジエータ)は昔からありましたが、今回きちんと計算してやってみて、とても有効な方式だと感じてます。
      1. Posted by うったん   2022年03月07日 13:54
      こんにちわ。

      昔、長岡哲男さん設計のドロンコーンのスピーカー自作しました。16cmフルレンジに20cmドロンコーン。高さ90cm位のフロア型の一番低い位置にドロンコーンという設計でした。

      今思い出すとすごい低音でした。

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