2020年02月24日
2人のエスコバル


ドキュメンタリー映画 「2人のエスコバル」が面白かった。今のところAmazon等には見つからず、DAZNでしか観られないようだ。
あの事件の起きたワールドカップの5年前、1989年に国立競技場で観たトヨタカップを思い出す。当時最強の名を欲しいままにしたACミランと互角に戦った南米王者が「ナシオナル・メデジン」だった。フランシスコ・マツラナ監督は見事なチームを作ってきた。CBアンドレス・エスコバルと、異能のGKレネ・イギータを中心とした超ハイライン守備で、アリゴ・サッキ監督による世界最先端のプレッシングサッカーと真っ向勝負を挑んだ。まるで鏡で映したかのように似たチームが、バスケットボールのコートほどのコンパクトな陣形を保ったままスライドしていく。これはサッカーなのか?何か別のスポーツではないのか?それほど衝撃的だった。
ファンバステンやバレージらスター選手を揃えたACミランはともかく、ブラジルでもアルゼンチンでもなく、コロンビアになぜこんな凄いクラブが出来たのか、そしてなぜ代表が急に強くなったのか、このドキュメンタリーを観てよくわかった。コロンビア・サッカーの奇跡のような発展には、麻薬王パブロ・エスコバルが深く関係していた。そして模範的な名選手アンドレス・エスコバルの悲劇に繋がっていく過程が、生々しい映像と監督や選手、服役囚らの証言によって明らかにされる。パブロは利己的で凶悪な犯罪者だが、サッカーを愛し、コロンビアサッカーを強くしたことも事実だった。あの時にパブロが生きていれば、アンドレスも命を落とすことはなかったかもしれない。2人の死後、コロンビアサッカーは長く低迷し、ハメス・ロドリゲスらを擁して復活するまでに20年近くを要することになる。